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開放隅角緑内障の原因と治療

2021年10月21日


開放隅角緑内障は眼圧が高い、もしくは眼圧が正常であっても視神経が普通の人より弱いことで視神経が正常の眼圧に対してでも耐えられず減少し視野異常が発症する病気です。大部分の症例は眼圧が正常(10~20mmHg)で正常眼圧緑内障もしくは低眼圧緑内障とよばれています。人によりなにも治療しない状態での眼圧は異なっていますので各人でのベースラインとなる眼圧を把握しておくことが重要です。眼圧は日内変動や日時が異なっても変動しますので経過観察による決定が必要となります。治療の目的はベースラインとなる眼圧をできるだけ低下させ視神経に対しての負担を軽減して機能障害の進行を止めることにあります。

角膜裏面と虹彩の間にある部位を隅角といいます。眼内の房水は虹彩付け根の裏側にある毛様体突起の上皮細胞で形成されます。(血液房水柵から血漿成分のろ過および能動輸送により房水は産生され瞳孔の間を通過して85%は隅角にある線維柱帯を通りシュレム管経由で上強膜に流出します(経線維柱帯排出路または主流出路とよばれています)。残りの15%は虹彩根部および毛様体経由で脈絡膜循環に流出します(副流水路とよばれています)。     開放隅角緑内障での眼圧上昇の原因は主流出路にコラーゲンなどの細胞外マトリックスが沈着して流出路が狭くなり房水の流出が悪くなることが原因とされています。開放隅角緑内障の治療は眼圧を下げることにありますが、主流出路に対してのみ有効な薬剤はROCK阻害剤、イオンチャンネル開口薬(交感神経非選択性刺激薬、副交感神経刺激薬)、などがあります。先ほど記載したとうり主流出路は狭窄のため薬の効果が悪い可能性があるため現在の眼科マニュアルでは副流水路からの房水流出を促進させるPG関連薬が第一選択とされています。(副流出路のみからの房水流出を促進させる薬としては他にアルファ1遮断薬、アルファ1β遮断薬、アルファ2刺激薬があります。)主流出路と副流出路からの房水流出を促進させる薬としては選択的ep2作動薬がありPG関連薬のひとつであるラタノプロスト点眼薬と同等の効果があることが報告されています。他にイオンチャンネル開口薬、非選択性交感神経刺激薬なども主流出路と副流出路に関係して眼圧の低下作用があります。眼内に産生され眼圧の上昇にかかわる房水産生を抑制する薬はベータ遮断薬、アルファー1ベータ遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、アルフ-2刺激薬があります。

ところでPG関連薬が第一選択とされていますが効果発現に個人差があることや点眼後の眼周囲の軽い洗浄をしないと眼周囲に色素沈着などの副作用があるため点眼を中止してしまう患者さまもいることが問題点として指摘されています。PG関連薬が第一選択とされる以前はベータ遮断薬が第一選択薬とされていました。ベータ遮断薬は房水産生を抑制することで眼圧を低下させる薬ですが日中の交感神経が優位な時間帯で効果が発揮されるため現在でも重要な位置をしめる点眼薬です。眼圧下降作用はPG関連薬より弱いとされていますが充血、眼周囲の色素沈着などの副作用はなく患者さまが安心して長期に使用してくださる点眼薬です。しかし全身的に副作用が発症する可能性が指摘されており心臓の疾患や喘息などの治療を受けている患者様には投与を控えることが望ましいと考えられています。点眼薬は微量な容量を点眼するのみで内服薬や注射による薬剤の投与と比較するとほとんど血液中に薬剤が移行することはないので全身的な疾患とは無縁と考えがちですが薬に対する受容体占有率は以外に高いことが報告され、実際に徐脈や喘息が悪化した症例報告もあり添付文章どうりの注意が必要です。

現在開放隅角緑内障の点眼薬は新薬が次々と開発され予後はしだいによくなっていくでしょう。また眼底三次元画像解析装置などの普及などで緑内障の早期発見がより正確にできるようになってきました。これらの要因により開放隅角緑内障に対しての治療がしだいに向上していくことが期待されます。健診などを積極的に受け早期発見、早期治療をめざしましょう。