• 診療時間 11:00~13:00 / 14:30~19:00 木曜休診、日・祝は18:00まで
  • 祝日も診療 

お知らせ

コンタクトレンズケアの基礎知識

2022年01月13日


コンタクトレンズは高度管理医療機器に指定されています。眼の中に直接入れるもので眼には涙液層があり、コンタクトレンズは涙液層の表面張力や眼瞼によって支えられ安定した状態で固定されます。(もちろん瞬目により動きはあります。)また、涙や瞬目にはコンタクトレンズの下の涙液を入れ換え、眼の中をきれいにする役割もあります。しかし、コンタクトレンズはワンデータイプのものを除き安全に使用していただくにはケアが必要です。

 

コンタクトレンズケアの重要性 (以下コンタクトレンズをCLと記載します。また酸素を透過するハードコンタクトレンズはガス透過性ハードコンタクトレンズといわれていますが以下RGPCLと記載します。)

(1)CLのケアについて

・CLのケアは、そのタイプにより多少の違いがありますが、その目的は“装用後
のCL表面に付着したものを除去し、次回に装用する時も清潔な状態で使用
できるよう準備する”ことにあります。

・CL表面に付着した汚れは、主に涙液に含まれる脂質やタンパク質、化粧品
の汚れ等で、現状は「物理的に除去する方法=こすり洗い」と「化
学的に除去する方法=薬剤を使用」が一般的となっています。

(2)CLケアの重要性

・レンズ上の汚れの蓄積は、レンズ寿命の短縮や装用感の悪化、また眼自
体のダメージに繋がるケースもあります。

・一定期間装用されたRGPCLでは、所定のケアを行っていないとレンズ表面中央部に
よごれが出現します。このような状態のレンズを装用し続けると、角膜や結膜など
眼に対して何らかの障害を惹き起こし、重篤な場合は感染症に至るケースもあります。

 

コンタクトレンズケア用品の商品知識

・現状販売されている含水性SCLの場合、ケアを怠るとレンズ表面だけでなく
内部にまで汚れが取り込まれるケースもあります。また、時にカビの発生もみら
れ、RGPCLに比較し一層の汚れの付着や素材自体の劣化が懸念され、感染
症など重篤な眼障害を惹き起こす危険性も高くなるので注意が必要です。

 

CLケアとコンプライアンス

(1)コンプライアンスとは?

・コンプライアンスとは、「医師の指導に患者様が従うこと」であり、CL装
用に置き換えると「CL装用全般に関して、医師の指導に患者様が従うこと」となります。
具体的には、装用期間や時間を守る、指導通りの正しいケアを行う、定期検査を指示通りの期間で受診する、などがあげられます。

(2)コンプライアンス向上への取り組み

①医療機関からの取り組み
・CLは高度管理医療機器であり“コンプライアンスの低下を招くと副作用の
恐れがある”ということを処方者側である医院でも常に念頭におくことが大切です。

・CL使用を使用している患者様に対して、適切なインフォームドコンセントを実施する
ことが重要です、そのために、CL装用におけるデメリットも含め説明することが必要となります。

・定期検査時に取扱いの確認や指導を反復して行うことは処方時と同様に重要なことです。
行政の中のコンタクトレンズケアClは高度管理医療機器であり、薬事法によりさまざまな規制が定められていますo
CLケアにおいて、“雑品”として分類されるものは一般社団法人日本コンタクトレンズ協会(以下CL協会)の安全自主基準に、また“医薬部外品”として分類されるものは薬事法にて諸基準が定められています。

 

CLケアに関わる規制

(1)雑品
・CL協会の定める安全自主基準によって定められている試験・検査等の項目をクリア
する必要があります。※CL協会に加盟しているメーカーの製品のみに適用0

(2)医薬部外品
・薬事法で定められており、臨床治験を実施し、厚生労働省の認可が必要です。
コンタクトレンズケアに求められるもの現在のCLケア用品は、その用途、及び必要性から主にハード系とソフト系の2つに
分類されます。

ハードコンタクトレンズは洗浄、保存すすぎ(水道水でも可能)たんぱく除去、はいずれも必要なケアです。ソフトコンタクトレンズは洗浄、保存、すすぎ(水道水不可)たんぱく除去のほか消毒も必要です。

 

コンタクトレンズケア用品の知識

機能面として求められるもの

(1)洗浄力

①洗浄力の持つ意味
・CLを清潔に保ち、安全に装用するために、装用後のCLに付着したもの
(主に脂質)を除去する役割として十分な洗浄効果が必要です。

②汚れ除去のメカニズム
・洗浄液をレンズ表面に2~3滴たらし、手指の腹でこすることにより、洗
浄成分である“界面活性剤”が汚染物質を可溶性にし、さらに物理的作用(こする)により汚れを除去します。

③洗浄効果の証明
・洗浄効力試験:液に配合されている界面活性剤力が水中でミセル※を形成する濃度以上であることを確認する試験です。
(※ミセル…界面活性剤の集まりで、界面活性剤が活性することを意味しています。)

界面活性剤の種類

界面活性剤は主に油性汚れを液中に乳化、分散させ、油性粒子を液中に浮き上がらせる役割を有しています。

・非イオン性界面活性剤:
眼に対する毒性が低く、CLの洗浄液成分としては最も一般的となっています。酸性溶液中でもアルカリ性溶液中にも使え、化学的に安定しています。

・陽イオン性界面活性剤:
高い殺菌力を有していますが、眼刺激性がやや強い特性があります。CLケアとして使用された実績はありますが、SCLへの吸着による眼障害の発生等により、現在ではあまり使用されていません。

・陰イオン性界面活性剤:
殺菌力は弱いものの、眼刺激性が低いため、石鹸、シャンプー、台所用洗剤等に広く用いられています。

・両性界面活性剤:洗浄力が強く、殺菌作用も期待できますがSCLへの吸着及び眼刺激性が懸念されます。

(2)タンパク除去効果

①役割
・“界面活性剤”による洗浄のみでは除去しきれないタンパクの汚れを除去します。

②メカニズム
・一般的にはタンパク分解酵素が、タンパク質のペプチド結合を切断することにより、タンパク質の汚れを分解して除去します。

(3)消毒効果

消毒の持つ役割

・微生物の繁殖を防ぎ、眼障害とレンズの劣化を防止する役割があります。

・CLの消毒は、現状国内においては含水性SCLに固有のものでありますが、
レンズに付着した細菌や真菌などがレンズケース中で繁殖する場合もあり、それらの微生物を“消毒”によつて不活性化させる必要があります。

ソフトコンタクトレンズ消毒の代表的な方法とその比較

①煮沸消毒
ソフトコンタクトレンズの消毒では他の消毒法に比べ最も効果の高い消毒方法です。

②コールド消毒
煮沸消毒に対し非加熱式の消毒方法のことで過酸化水素による消毒、マルチパーパスソリューション、ポピドンヨードによる消毒がふくまれます。

 

(参考:細菌:大きさは5~0.2μmで真の細胞核をもたない単細胞微生物。大腸菌、緑膿菌、ぶどう球菌など
真菌:大きさは100~0.2μmでセルロースまたはキチン質の細胞壁を有する葉状葉緑体。酵母菌、カビなど)

 

消毒方法の比較

煮沸消毒の長所としてSCLの消毒においては、他の消毒方法に比べ、最も効果の高い消毒方法であることす。短時間で処理でき細菌や真菌などに高い効果を発揮するとともに、アカントアメーバにも有効です。

コールド消毒(マルチパーパスソリューション)の長所は熱による汚れの変性や固着、またCL素材の劣化や変色など、CLへの影響が少ないところにあります。また1本で洗浄、消毒、すすぎ、保存のケアステップが可能となり、簡便性が向上します。誤使用によるトラブルが少なことや消毒効果の持続性に優れている点も長所としてあげられます。(使用可能なSCLが煮沸ほど限定されません。)

過酸化水素系の長所は熱による汚れの変性や固着、またレンズ素材の劣化や変色などのCLへの影響が少ないこと、過敏症の頻度がマルチパーパスソリューションに比較し少ないこと、使用者のコンプライアンスの向上を図りやすいこと、使用可能なソフトCLが煮沸ほど限定されないことなどがあります。

しかしそれぞれの消毒方法には短所もあります。

煮沸消毒の短所は長期使用により熱による変性固着、レンズ素材の劣化や変形が生じやすいこと、消毒効果が持続しないこと、電源が必要であることなどがあります。

マルチパーパスソリューションの短所は消毒効果がやや弱いこと、煮沸にくらべ消毒時間が長いこと、消毒剤等がふくまれているためアレルギーを惹き起こす場合があることなどがあります。

過酸化水素系の短所は強い酸化作用を有するため誤使用の場合角膜上皮や結膜への刺激が強く角膜、結膜に障害を惹き起こす可能性があること、中和操作が必要であること、煮沸消毒に比べ消毒時間が長いこと、消毒効果が持続しないことなどがあります。

 

保存効果

①保存効果の役割
・洗浄後のCLを衛生的に保つとともに、レンズの形状や状態等、レンズ本来の特性に影響を与えないような環境で保存することが求められます。

②RGPCL用保存液
・洗浄効果、及び静菌効果を目的として“非イオン性界面活性剤”が配合され、また水濡れ性の向上を目的として、“増粘剤”が配合されるケースが多く存在します。

③SCL用保存液
1)煮沸消毒の場合
・Nacl錠剤や顆粒を精製水で調製するものと、製品として無菌的に調製されたものがあり、Nacl錠剤、顆粒には“塩化ナトリウム”、“防腐剤”及び“緩衝剤”などが配合されています。
また、保存液の浸透圧、水素イオン濃度により、レンズ形状や含水率が変化するため、涙液と同じ条件で保存する必要があり、各種薬剤が配合されています。

2)コールド消毒の場合

・独立した保存液は存在しないケースが多く、過酸化水素を消毒成分としたシステムでは中和後の溶液が保存液となり、マルチパーパスソリユーション(MPS)では、消毒液が消毒完了後に保存液として用いられます。