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お知らせ

点眼薬の角膜上皮障害

2023年03月02日


点眼薬の主剤や防腐剤により角膜上皮障害を起こすことがあります。

京都府立医科大学の横井先生の報告では

点状表層角膜炎、透過性亢進型角膜上皮障害、流れるようなパターンを持つ角膜上皮障害、遷延性上皮欠損に分類できます。

点状表層角膜炎:点眼薬の毒性による典型的な障害の場合は角膜の中央寄りに病変が発症しやすく、結膜上皮障害はあまり発症しません。(ドライアイでは角膜下方に発症し結膜にも上皮障害が発症します)

透過性亢進型角膜上皮障害:フルオレセイン染色で5分程度すると上皮にフルオレセインがしみこんだような境界不鮮明な染色像が見られます。防腐剤である塩化ベンザルコニウムによる界面活性作用による角膜上皮細胞の細胞膜障害に起因しているものとかんがえられます。塩化ベンザルコニウムを含まない人工涙液の頻回点眼と塩化ベンザルコニウムを含まないヒアルロン酸ナトリウムの点眼などが治療に必要となります。

流れるようなパターンを持つ角膜上皮障害:ハリケーン角膜症、渦巻パターンなどとよばれています。健康な角膜上皮細胞の分裂、角膜周辺からの上皮細胞の移動、表層上皮細胞の脱落などの正常な細胞変化のバランスが崩れたときにこの様な角膜上皮細胞障害のパターンが発症します。放置すると角膜上皮細胞障害を治癒に導く基底細胞の分裂が障害を受け上皮細胞の欠損を生じてしまいます。塩化ベンザルコニウムを含まない人工涙液の頻回点眼、消炎剤の点眼が治療に必要です。

遷延性上皮欠損:遷延性上皮欠損では角膜上皮細胞の欠損した部位を覆う方向に向かう上皮細胞が認められずその部位の周辺に大きな円形の上皮細胞の欠損部位が発症します。この近辺の上皮細胞は接着不良も伴っているためフルオレセインで染色すると上皮細胞下に拡散した染色像を認めます。遷延性上皮欠損の場合も塩化ベンザルコニウムを含まない人工涙液の頻回点眼、消炎剤の点眼が治療に必要です。

これらの薬剤に起因した角膜上皮細胞障害を防ぐため必要異常に塩化ベンザルコニウムを含む点眼を使用しないことや塩化ベンザルコニウムを含む複数の点眼薬をできるだけ使用しないことが重要です。またこれらの点眼薬をいみもなく漫然と長期使用することや細胞毒性をもった点眼薬はできるだけ使用しないこともも重要です。患者様の涙液のターンオーバーの不良(涙液減少、眼瞼下垂、結膜弛緩など)や上皮細胞になんらかの異常が存在していることも病変を発症する要因となります。このような患者様にはできるだけ防腐剤の配合されていない点眼薬(できれば塩化ベンザルコニウムでない防腐剤を配合している点眼薬)を使用することで上皮細胞障害をおこさないようにすることが重要です。