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お知らせ

緑内障に対してのβ遮断薬治療と心臓疾患の関連性(内因性交感神経刺激様作用(ISA)と膜安定化作用(MSA)の観点から)

2023年03月30日


β遮断薬の緑内障と心臓疾患について前回説明させていただきましたが今回は内因性交感神経刺激様作用(ISA)と膜安定化作用(MSA)の観点からお話をさせていただきます。

現在日本において使用可能なβ遮断点眼薬はチモロール点眼、ニプラジロール点眼、カルテオロール点眼、レボブノロール点眼、ベタキソロール点眼薬のみですがこのうちISAを有するのはカルテオロールのみでその他はMSAのみ有しています。β遮断薬は刺激を受けると細胞内に取り込まれリサイクルや分解されることで細胞表面上の受容体数を調節します。

β受容体を遮断するとこの調節機構が働かなくなりβ受容体合成に向けた生体反応が生じて細胞表面上のβ受容体が増加します。しかしISAを有するβ遮断薬はアドレナリンがβ受容体への結合をするのを競合阻害する一方で、自らがβ受容体を弱く刺激します。そのためISAを有するβ遮断薬では調節機能が働き受容体数は増加しません。

ISAがないMSAのみのβ遮断薬は受容体数を増やすことから長期投与により効果が減弱することがわかっています。全身的なISAの臨床的な影響として、過度の心拍数抑制を起こしにくいことや抹消循環障害を起こしにくく、血清脂質の影響に対する影響が少ないことが報告されています。
しかしカルテオロール点眼はISAがあってもコントロール不十分な心不全、洞性徐脈房室ブロック(Ⅱ、Ⅲ度)心原生ショックのある患者様には禁忌となっています。循環器科からβ遮断薬が投与されている患者様は心不全の状態であるのでカルテオロール点眼は投与禁忌の状態にあります。(同じβ遮断薬でISAがあっても緑内障と全身疾患に使用する場合とは使用法が異なります)

やはり心疾患のある患者様にはβ遮断薬の点眼は避けるか循環器の先生に相談してから使用することが重要でしょう。